思いがけないきっかけでよみがえる一生に一度の恋。
そしてともには生きられなかったあの人のこと――。
大胆な仕掛けを選考委員の三浦しをん氏辻村深月氏両名に
絶賛されたR-18文学賞大賞受 賞のデビュー作「カメルーンの青い魚」。
すり鉢状の小さな街で、理不尽の中でも懸命に成長する少年少女を
瑞々しく描いた表題作。
その他3編を収録した、どんな場所でも生きると決めた人々の強さを
しなやかに描き出す5編の連作短編集。
町田そのこさんの小説は本屋さんに行く度に、
目立つところによく置かれていて気になっていました。
読み終えて、わたしもすっかり好きな作家になりました。
文章が素敵でした。
あと解説を読んで知ったのですが、これは連続短編集のようです。
気づかなかった、、、。(一気読みしたら気づけたのかな?)
もう一回読まなきゃ、とつい思わせられちゃいました。
読者を楽しませる力が素晴らしいなぁと思います。
感想
もがいて。
どの物語の登場人物もそれぞれに悩みを持っていて、
必死に”此処”で生きてたたかっている。
逃げずにいようと踏ん張っていたり、反対に、
逃げたいと願いながらそれでも踏ん張って生きていたり。
別に強いわけじゃない、むしろ、弱くてぼろぼろで、
それでもなんとか光が差す方を見つけて生きていきたいともがく。
そんな人間らしさに共感して、
それぞれに答えを出せた主人公たちに勇気をもらえました。
人生は難しくて、苦しい。それでも
私には『溺れるスイミー』の唯子の、
両親を思って抱く葛藤やどこかへいきたいと願う気持ちが
すごく刺さりました。
これを選べば正解、と言えるものがないからこそ
人生は難しくて、苦しくて。
それでも自分の意志で選択をして正解にすれば、
私はそれで良いのだと思います。
そして、一番好きな物語は『波間に浮かぶイエロー』でした。
小さく声に出す。言わずにいられて、よかった。私がしようとしていたことは、
不幸自慢だ。私の方が可哀相なのよ、あなたより余程苦しいのよ。そんなことしても、どうにもならない。
私より幸福な場所で苦しいと泣いているひとに、石を投げようとせずにはいられない。
でも投げ切るだけの強さもなくて、掴んだ石だけ足元に溜まっていく。
それは私自身を身動き取れなくさせる。
この文章がとても好きで。
弱さ、優しさ、強さ、悲しさ、孤独。
これには全部が詰まってる。
あぁ、ずるいなぁ。
こんな文章を書けるひとを好きにならずにはいられないです。
最後に
わたしたちは、ここではないどこかへ行きたくて。
行かないといけない気がして逃げたくなって。
本当に逃げる決意をする人。それでも戻ろうと決意する人。
どれも正解で、その人の中にしか答えはなくて。
誰しも、もがいて苦しんで涙して。
そうやって生きているんだなぁ、と改めて思いました。
時にくるしいけれど、生きることは素晴らしい。
そう思わせてくれる物語でした。