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小説

言葉は魔法ではないけれどー『本日は、お日柄もよく』(原田マハ・著)感想ー

OL二ノ宮こと葉は、想いをよせていた幼なじみ厚志の結婚式に
最悪の気分で出席していた。

ところがその結婚式で涙が溢れるほど感動する衝撃的なスピーチに出会う。
それは伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。
空気を一変させる言葉に魅せられてしまったこと葉はすぐに弟子入り。

久美の教えを受け、「政権交代」を叫ぶ野党のスピーチライターに抜擢された!
20万部突破の、目頭が熱くなるお仕事小説。

登場人物

●二ノ宮こと葉
思い込んだら一直線な性格だが、自分に自信が持てない普通のOL。
スピーチライター・久遠久美と出会い、人生が変わり始める。

●久遠久美
政治家などのスピーチを陰で支える「伝説のスピーチライター」。こと葉の師匠となる。

●今川厚志
こと葉の幼なじみで良き理解者。正義感が強く真っすぐな性格。早くに両親を亡くす。

●小山田次郎
厚志の父・篤朗がかつて幹事長として支えた民衆党の党首。久美に信頼を寄せている。

●二ノ宮キク代
著名な歌人。多忙な母を持つこと葉にとっては母親代わり。いつもこと葉を温かく見守る。

●和田日間足(わだかまたり) 通称:ワダカマ
広告業界で活躍するコピーライター。自分に絶対的な自信を持つ、したたかな戦略家。

●今川篤郎
厚志の父。国民の幸せを第一に進展党と闘ったが、志半ばにしてこの世を去った。




はじめに

こんなに感動の波が幾度もやってくる小説だとは、思わなかった。

原田マハさんの小説、はじめて読んだのですが、
とても読みやすく一気に読み切りたくなる面白さがあった。

また、私は「スピーチライター」というお仕事も初めて知った。

言葉は魔法ではないけれど、魔法のような魔力のある言葉を生み出す
とっても素敵なお仕事だと思った。

こういうお仕事小説の良いところは、
存在すら知らなかった仕事がどんな風なものなのかを知り、
想像することができることだと思う。

 

私たちは、言葉で人の心を動かすことができる。

スピーチライターの仕事を知り、言葉の魅力を感じられる小説。




感想

言葉のもつ力

日本有数の俳人であるおばあちゃんに、こと葉が言われた言葉。

「わかってないのねえ。言葉は、メッセージカードのようなものよ」

一枚一枚に、自分の思いを書きつける。とっておくもよし、日々眺めるのもよし。
必要なくなれば、破っても燃やしてもいい。
死ぬまでずっと、心にしまっておいてもいい。

でも、誰かの目に、耳に触れれば、なおいいだろう。
誰かに伝えられれば、なおすばらしいだろう。
思いを共有できることもあるかもしれない。
心と心を、響き合わせることもできるかもしれない。

言葉の力を、あなたも信じてみたらどう?

 

この後、九遠久美のスピーチに魅了され、
こと葉はスピーチライターとしての道を歩むことになる。

読み始めて数ページ目で出てくるこの言葉を、読了後、読み返した。
この言葉の深みは、言葉の力を知った後に聞いてやっと理解できた。
心にスッと入ってきた。

こと葉も、スピーチライターとなった後は、この言葉の深みを知り、
おばあちゃんと分かり合えるようになったんじゃないだろうか、と思う。




結婚式のスピーチや国会議員の演説など、しっかりと述べられ感動を生み出すあの言葉は、
推敲を繰り返し、練り上げられたものなのだと、私は今まで知らなかった。

というか、考えたことなんてなかった。

スピーチライターの力添えがあった上で、
時間をかけて作り上げ、何度も練習し自分の言葉にしたからこそ、
だれかの心を打つのだな、と。

言葉の魔力で人生を変えていったこの小説の登場人物たちのように、
伝えることの大事さ、そして、素晴らしさをひしひしと感じた。

不思議と私も、ちゃんと自分の気持ちを文章にして、誰か大切な人たちに伝えたくなった。




こと葉の真っ直ぐさ

私は話すことにおいて、苦手意識があって、しっかりとしたスピーチをしている方々を見ては、「すごいなぁ」と漠然として幼稚な感想ばかり抱いてきた。

でもやはり、その裏にはしっかりと努力があって。

言葉の魅力に気づいたこと葉が、九遠さんの下で働き、
スピーチライターとして腕を磨いていく。

 

その道のりは、決して簡単ではないのだけれど、
こと葉を見ていると、

「好きが生み出す原動力」

の凄さを感じた。

絶対に良い文章を作りたい、この人の助けになりたい、という
まっすぐで純粋な思いが、こと葉を動かしている。

なにより、この小説に出てくる人たちは、みんなあたたかい人たちだ。
時折出てくるスピーチの感動の波にもやられて、
あちらこちらで優しさの渦が起こった。

何度も涙腺が崩壊した。

この小説は、言葉の素晴らしさ、努力することのすばらしさを教えてくれる。




最後に

この小説で好きだった文章。

『困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。
三時間後の君、涙がとまっている。
二十四時間後の君、涙は乾いている。
二日後の君、顔を上げている。
三日後の君、歩き出している』

この言葉に私も登場人物同様、救われた。

良いこと言うよね。
もう私は、小説の登場人物たちみんなが好きで好きでたまらなくなった。

初めから最後まで、ずっとほんのり暖かいお話だった。
余韻に浸れる小説だ。

原田マハさん、もっと早く読めば良かった!
他の本も読もう。




余談ですが、お仕事小説だと、この3つが好き。

伊坂幸太郎さんの『チルドレン』『サブマリン』では、家庭調査官。
坂木司さんの『和菓子のアン』では、和菓子屋さん。

より好きになったのは、働だしてからなので、
自分ならどう思うか想像しやすい小説にハマりやすいのかもしれない。