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小説

救いになる言葉があるー『おまじない 』(西 加奈子 ・著)感想ー

さまざまな人生の転機に思い悩む女子たちの背中を
そっと押してくれる魔法のひとこと―。

著者の新境地をひらく10年ぶりの短編集。




西加奈子さんの作品は大好きなのですが、
この作品は読んだことがなく文庫本化したということで
そのタイミングで読みました。

ずっとしんどいな、と思いながら頑張ってきて
平気なふりして今を生きていても
過去の傷はどこかでちゃんと癒してあげなければならなかったのだと、
読み終わったときに思いました。

あの頃のぼろぼろだった自分を救ってくれた気がします。

誰にとってもきっと救いになる言葉が見つかります。
そんな作品です。




感想

自分は自分で良いんだ、と心から思わせてくれる

なにが正しいのか、どちらを選べば良いのかわからなかったり、
周囲の言葉が執拗に頭にこびりついて離れなかったり。

どうすれば良いの、と不安になって泣きたくなって、
どうしようもなくなる瞬間はきっと誰にでもあること。

そのどれも私を作っていて、どれも私で、でも時々、自分がバラバラになりそうになる。
何かに強く寄り添うと、他の何かをおろそかにしているような、
他の何かを裏切っているような。

 

自分では、答えが出せなくてうまくいかずにあがいてもがいて苦しんで。
そんなときにおっさんが言葉をくれるんです。

8篇の物語のどのおっさんにも私は救われました。

いつの間にか歯を食いしばって生きてしまっていることがあって、
傷ついたことすら忘れないといけない、忘れたら前に進めるんだと
そうやって歯を食いしばって生きなくても良いんだよ、と教えてくれました。

自分は自分で良いし、ちゃんと傷ついて良いんだと、
気づくことができたんです。




こんな言葉を待っていたのかもしれない

ずっと誰かにそう言って欲しかった。
そう思いながら、誰しも生きているものなのかもしれない。

一文を読んで、「あっ」と思ったときには涙が溢れてる。
西さんの作品は、そういう瞬間があります。

心がぼろぼろだったことに気づいてちゃんと悲しんで、
そして、読んでいるうちに心が暖かくなるんです。

お前がお前やと思うお前が、そのお前だけが、お前やねん。

おじさんが言ったこの言葉は、
これから生きていくときに度々思い出すことになるだろう、と思います。




最後に

感想をまとめている最中にも、
作中のいろんな言葉を思い出してじーんときてしまいました。

私にとって、すごく大切で前を向く力をくれる作品でした。
結局、やっぱり、西加奈子さんの作品が大好きです。

最後の長濱ねるさんとの対談も素敵でした。
(アイドル時代から長濱ねるさん推しだったので、
大好きな2人の対談素晴らしすぎました、、、)