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小説

それは心からの叫びだったー『夫のちんぽが入らない』(こだま・著)感想ー

同じ大学に通う自由奔放な青年と交際を始めた18歳の「私」(こだま)。

初めて体を重ねようとしたある夜、事件は起きた。
彼の性器が全く入らなかったのだ。
その後も二人は「入らない」一方で精神的な結びつきを強くしていき、結婚。しかし「いつか入る」という願いは叶わぬまま、
「私」はさらなる悲劇の渦に飲み込まれていく……。

交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、
ドライかつユーモア溢れる筆致で綴った“愛と堕落”の半生。
“衝撃の実話”が大幅加筆修正のうえ、完全版としてついに書籍化!

登場人物

私|主人公、小学校教師
夫|高校教師



はじめに

恥ずかしくてずっと読めずにいて、
ただかなり話題になった本だからずっと気になっていた。
図書館の自動貸出機があったので、それを使ってサッと借りてきた。

 

まず、こんなに重く苦しい物語だとは思いもしなかった。

わたしは、本の装丁が気に入って手にしてしまうことが多い。
逆に言えば、気に入らない装丁だと中身が気になっても読む優先度が低くなる。

この本は、もちろん前者だった。
気になりすぎるタイトルに、ただただ美しく惹かれてしまう表紙。

だからもう、余計に衝撃だった。
生き方について考えさせられる小説だった。

愛を知っている大人は全員読んでみてほしい、、、!



感想

どう受け止めどう向き合っていくのか

いきなりだが、夫のちんぽが入らない。本気で言っている。
交際期間も含めて二十年間、この「ちんぽが入らない」問題は、
私たちをじわじわと苦しめてきた。周囲の人間に話したことはない。
こんなこと軽々しく言えやしない。

冒頭の文章。

「え、、、?」と思った。
冒頭からインパクトが強すぎるし、この後に続く言葉も全てが赤裸々に書かれすぎていた。

勝手に、それでも明るく生きていくお話かと勝手に思っていた。
これは「私」の心からの叫びなのだと思った。

 

簡単に「わかるよ」とか「もっと大変な人もいるよ」と言われてしまう絶望感は、
経験した人にしかわからないかもしれない。

読み進めていくうちに、苦しみがじわじわと滲んで広がっていった。

やるせない気持ちを拭いきれなかった。




愛のかたち

こんなにもどうしようもできないほどの深い苦しみや悩みが書かれた小説を
わたしは読んだことがなかったかもしれない。

(恋をして好きで仕方なくて悩み苦しむ小説はたくさん読んできたけれど。。。)

 

「私」の心からの叫びを聞いて、運命との向き合い方について考えた。

わたし自身は、仕方ないからと受け止めて、
置かれた場所で最大限たのしく生きようと必死になるタイプ。

でも、どんな状況でも楽しめる自信があったはずなのに、
著者のような境遇にあったなら、どうするだろうか、と。

間違いなく、彼ともう会わないだろう、と思う。

そんな現実と向き合い続けるなんて、辛すぎるから。
忘れてしまえた方が、楽だから。



けれど、著者はそれでも一緒にいることを選んだ。
というより、離れることを考えなかった。

お互いの相手に対する恋心のようなものが、ほとんど描かれていない。
代わりに苦悩がたくさん描かれている。

それが、逆により一層ふたりの愛を強く印象づけているようだった。

 

愛とは、こういうことなのだろうか、いや、でも、これってやっぱり。。。

と堂々廻りで、わたしはまだ答えが出せなさそうだ、と思った。




最後に

最近、「普通」ではないことに焦点をあてた小説をよく読んでいる気がする。
それとも、わたしも「普通」ではないと言う自負があるから気にしてしまうだけなのか。

いろんな考えがあって、それがわたしの心ををどんどん軽くしている。

小説を読むことで、感情に幅が広がる。
これからも、こういう小説を読んでいきたい。

(最近、思いお話を読みすぎたから、次は軽いお話を読もう。)
(何事もバランスが大事です。。。)