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小説

未来は彼らの手の中にあるー『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(ブレイディみかこ・著)感想ー

優等生の「ぼく」が通う元・底辺中学は、毎日が事件の連続。
人種差別丸出しの美少年、ジェンダーに悩むサッカー小僧。
時には貧富の差でギスギスしたり、アイデンティティに悩んだり。

世界の縮図のような日常を、
思春期真っ只中の息子とパンクな母ちゃんの著者は、
ともに考え悩み乗り越えていく。

落涙必至の等身大ノンフィクション。




はじめに

考えさせてくれる本だった。

この本は、英国に住む親子の話で、
元・底辺中学校に通う著者の息子さんが様々な問題に直面し、
母とともに考え乗り越えていくノンフィクション作品だ。

わたしはこれまで、英国社会の社会問題について、
考えたことなど一度もなかった。

というか、日本の政治に関しても
意見を持つようになったのは
ここ1〜2年の話だった。

先日、話題になっていた韓国映画
パラサイト』を観てから、
なんだかぼんやり考えることが多くなって、
だからこの本に惹かれてしまったんだと思う。

わたしはいつも映画や小説に、
考えるきっかけをもらっているように思う。

この本を読んだ方が、
どう考え現代を生き抜いていくか、
しっかり考えるきっかけになれば
もっと世界は変わっていくのだろうと思う。




感想

タンタンタンゴはパパふたり

『タンタンタンゴはパパふたり』という絵本が登場する。

ニューヨークのセントラルパーク動物園で恋に落ちた二羽のオスのペンギンの話。
実話に基づいた話だ。

他のペンギンたちが子どもをつくる季節がきて、卵を産み、
温めているのを見た二羽のオスのペンギンたちは、
卵に似た石を拾ってきて温め始める。

それを見た飼育係が、二羽はカップルなんだと気づき、
放置された卵を二羽の巣に置いておく。

するとカップルのペンギンは交代で卵を温め、
やがてペンギンの赤ん坊が誕生して彼らはパパになり、
赤ん坊はタンゴと命名される、という話である。

 

この絵本は、英国の保育業界では「バイブル」と言っていいくらい読まれている
と知ったときは衝撃だった。

わたしが通った専門学校には、
LGBTQのひとが結構いたけれど
これまでそういう方の存在は認知はしていても
しっかり言葉として受け取る機会はあまりなかったように思う。

なんというか、日本はそういう部分がいつも
ふんわりとしてぼんやりしたままだ。

 

そういう意味では、英国のこういう教育文化
(保育園で読ませる絵本が『タンタンタンゴはパパふたり』だったり、
中学生のうちからLGBTQについての授業があること)
はとても良いな、と思う。




 

元・底辺中学校

 

すごく個人的な話だけれど、
わたしは、公立小学校から私立中学校に行き、
そのあとそのまま進学せずに公立高校に通った。

だから、学校の雰囲気のギャップや富裕層・貧困層の問題に関しては
かなりリアルに想像できた。

そして、この格差問題は世界共通なのだ、ということも感じた。

 

私立には、やはり裕福な家庭の子供ばかりが進学してくる。

わたしの家庭は、未来への先行投資ということで、
何よりも教育費にお金をかけ他はほとんど削る、
というようなお金の使い方だったから進学できたのであって
富裕層とは全く違った。

だから、ギャップがかなり大きかった。

どちらが、良い・悪いの話ではなくて、
住む世界が違うとはこういうことなんだな、と
身をもって学んだ経験だった。

 

この本を読んであのとき感じたことが、
なまなましく蘇ってきた。

わたしも、著者の息子さんのように
悩んだカテゴリーは違えど
早い段階で格差社会に関して触れることができ、
多様性について自然と考えることができたので
とても良かったな、と思っている。

そして、今回は日本と違う英国社会の問題のリアルを
知ることができて、すごく良い機会になったように思う。

これを機に、今より世界に目を向けて
様々な視点から考えられるようになれたら、と思う。




最後に

英国ならではの問題が、
解説されながら書かれているので
全く英国社会について無知な人でも楽しめた。

こういう作品を読み、こういう世界があることを知る度に、
いかに狭い世界で生きていていかに固まった思考を
してしまっていたんだろうということを痛感させられる。

こんな作品にもっともっと出会っていって、
自分の世界を広げていきたい。

 

自分が属する世界や、自分が理解している世界が、
少しでも揺らいだり、変わったりするのが嫌いな人なんだろうと思った。

日本に戻ってくるたびにそういう人が増えているような気がするのは、
わたしが神経質になりすぎているからだろうか。

日本に住んでいる日本人だけれど、この言葉に共感できた。
こういう人が変わっていかなければ、
日本はいつまでもこのままなのだろうな、と思ってしまった。

みんながもっと様々な方向から考えることができたなら、
日本はもっと面白くなっていくのだろう、とも思った。
偏見を持つ人が減ると良いな、と心から思う。

これは、全国民に読んでほしい一冊。


公式サイトで4章分全文公開されています。
気になった方は、こちらから読んでみてください。