この国から「おじさん」が消える――
会社に追いつめられ、無職になった30代の敬子。
男社会の闇を味わうも、心は裏腹に男が演出する女性アイドルにはまっていく。
新米ママ、同性愛者、会社員、多くの人が魂をすり減らす中、
敬子は思いがけずこの国の“地獄”を変える“賭け”に挑むことにーー
この小説は、最新刊を読みたいと思って探しているときに見つけました。
タイトルに惹かれてあらすじを読んで衝撃を受けたので読むことに決めました。
この小説では、男性が中心に回る世の中で女性はもっと自由であるべきだ、
という強い意志のようなものを感じました。
男尊女卑の世の中に対する不満は少なからずわたしの中にもあったので、
小説でこんなことを堂々とメインテーマに上げている人がいるんだ、
と驚きました。
この小説には、より深く考えるきっかけをもらいました。
レビューを見ると、賛否両論あるようです。
確かに、名前は伏せているけれど実在の人物を
あまりに似せて書きすぎていてどうなのだろうか、、、
と思う部分もありました。
しかし、「おじさん」が消える、という視点は新鮮で面白く
思い切り女性目線で描かれたこの小説から考えさせられることは
多くあると思います。
読み終わった後、誰かと議論したくなる、この問題にきちんと向き合いたくなる、
そんな小説でした。
感想
女性が女性として生きるには
この小説は、二部構成になっているのだが
あちこち話が飛んで最初は少し戸惑った。
しかし、読んでいくうちに自分の中で著者からのメッセージが色濃くなっていって
気がついたら夢中で読み切ってしまっていた。
様々な女性の登場人物はみんな、世の中は女性が生きづらいことを感じている。
美穂子が育った国の教育は、欲しがらないように、と子どもに教えた。特に女性は。出る杭は打たれる、なんてことわざがあるくらいだった。特に女性は。「欲しがりません勝つまでは」。そのフレーズで戦争を乗り切ろうとしたのは、そんなに遠い過去ではない。
1ヶ月滞在したカナダから美穂子は、この国の違和感を敏感に感じとる。
どうして日本は、ときにこんなにも女性に対して厳しいのだろう。
そんな風に思ったことがある女性にとって、
この小説から伝わってくる強いメッセージは力になると思う。
日本に根付いている悪しき習慣
日本の女の子は「最弱の生き物」というような表現がされている。
なりたくてなったのではなく、そうならざるを得なかった。
それは、日本に根付いた文化がそうさせてしまったのではないか、と。
謙遜って、コミュニケーションを、私自身を、にごらすだけだった気がする。謙遜とか、何十年もかけて私の体に染みついてしまったものを、一つ一つ自分から剥ぎ取っていきたい。
自国の中でお互いを縛り合い、「先進国」というかつての栄光にしがみつき、変化を良しとしませんでした。
そんなことをしている場合ではないでしょう、
私たちは変わって行かなくてはいけないでしょう、
という著者の強い意思を感じた。
最後に
著者の思いが滲み出て溢れているからこそ、
レジスタンス小説と呼ばれるほど言葉の威力を感じるのだと思います。
わたしは、著者の想いに対して
それは違うのでは?
と思うことももちろんあります。
でも、それで良いんだと思います。
大事なのは、そう思った先に何を考えるのか、なのだと思います。
本を読むことは考えるきっかけをもらうことだ、とわたしは思うのです。
情報を浴びることに慣れすぎてしまってはダメ。
自分の意見を持てるほど自分でもよく考えることが大事なのだ、と思うのです。
良くも悪くも、頭の中を掻き乱される小説かもしれません。
まさに令和にふさわしい小説だ、と思いました。
こんな小説にもっと出会っていきたいです。
こちらから、松田青子さんのインタビュー記事も読めるので、
良かったら覗いてみてください。