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小説

思いが強すぎるあまり”おろか”になったー『劇場 』( 又吉直樹・著)感想ー

一番 会いたい人に会いに行く。
こんな当たり前のことが、なんでできへんかったんやろな。

演劇を通して世界に立ち向かう永田と、その恋人の沙希。
夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った――。

『火花』より先に書き始めていた又吉直樹の作家としての原点にして、
書かずにはいられなかった、たったひとつの不器用な恋。

夢と現実のはざまでもがきながら、
かけがえのない大切な誰かを想う、
切なくも胸にせまる恋愛小説。





この小説は、映画化されています。

映画のCMを観て気になったので
小説を読んでみることにした、というのが読むきっかけでした。

かなり読みづらく1ヶ月ほどかかり、ようやく読み終えました。

自分が苦手な典型的なタイプの人物が主人公だったこともあり、
途中で彼の惰性的な態度や自分の世界に没入して周りが見えていない部分に
度々、気持ち悪くなってしまいました。。。

 

けれど、著者はそんな人物を描きたかったというのも事実で、
作品としては完成しているのだけれど
これはかなり好みが偏るのではないかなぁ、と思います。

好みではなかった読者からの視点にはなってしまいますが、
感想を書いていきたいと、思います。




感想

恋愛小説ではなかったのかもしれない

演劇の世界で生きるため東京へやってきた永田と、
女優を目指して上京し服飾系の大学に通っている沙希。

正反対の二人は、狂気じみた永田のナンパのような声かけにより出会う。

 

だらしなく意味不明な発言が多い永田に対して、沙希はいつでも優しかった。

優しすぎた。

「サキね、ゆっくり話してくれる人たちの方が、言葉の意味を考えられるから嬉しいよ」

 

どんな言葉に対しても、笑顔で優しく対応する沙希は、
見ていてだんだん痛々しく、
永田の怠惰な生活もだんだん見ていられなくなった。

わかりやすい恋愛的展開は特になく、
この二人が互いに離れられない理由がわたしには理解できなかった。

もしかしたら、沙希の方がもっと心の奥底に闇を抱えていて
だからこそ、二人は一緒にいられたのかもしれない。

 

永田の心理描写がかなり多いのだけど、
わたしから見たら狂気じみて意味がわからない脳内を
のぞかされているような感覚がした。

著者があとがきで恋愛がわからないと言っていたように
恋愛がわからない人が書いたからこそ、なのかもしれない。




変わらないでいることで生まれることはあるのか

著者があとがきで述べているように、
変わらないでいることにはそれなりに労力が必要だ。
人間は、意識していないうちに流され変わっていく生き物だから。

 

永田は、変わらない自分に嫌気が指していながら、変わろうとしない。
自分のダメな部分を強く自覚していているのに、行動を起こさない。

その優しさに触れると、自分の醜さが強調され、いつも以上に劣等感が刺激され苦しみが増すことがあった。

それでも、沙希は変わらず優しくて、その優しさで永田は苦しむ。

 

永田の良いところとは、演劇のことを四六時中考えている、
それだけなのではないか、と思えてくる。

こんな時でさえも演劇的に考えてしまうことが、ほとんど病気だなと思った。

 

それは、その点だけ見れば素晴らしいことなのだけど、
とにかく他がダメすぎていて自ら劣等感に溺れて
自分も周りも破滅させているのではないか、と思った。

 

見ていて苦しくて、沙希と永田の笑顔のシーンでさえ、
わたしには悲しく写った。




最後に

「劇場」は、映画も観ました。

なんでこれが映画化なの?と思わずにはいられず。。。

監督が行定監督と知ってなんとなく腑に落ちました。
きっと行定監督が好きそうな話だったからなんだと思います。

行定監督の得意そうな世界観だったり、
キャストが良かったということもあるのか
映像によって小説よりは大衆向けの作品になっているように感じました。

下北沢や渋谷が舞台になっているので、
彼らと同じように夢を持って東京に来た人には共感できる部分が
あるのかもしれません。

わたしは、沙希のように田舎から上京してきた服飾学生だったので
何かしらの理由で故郷へ逃げるように
学校からフェードアウトしていった同級生たちが頭をよぎりました。。。

けれど、この作品はやっぱり好きにはなれず
感情移入もしませんでした。

わたしも心が歳をとったのかもしれません。笑
学生だったなら、影響を受けてしまったのかも。

 

又吉さんの描く世界観が好きな方は、気にいる作品だと思います!
気になっている方は是非読んでみてください。