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小説

強く、脆く、駆け抜けていったー『オルタネート』(加藤 シゲアキ・著)感想ー

高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須となった現代。
東京のとある高校を舞台に、若者たちの運命が、鮮やかに加速していく。全国配信の料理コンテストで巻き起こった
〈悲劇〉の後遺症に思い悩む蓉(いるる)。
母との軋轢により、〈絶対真実の愛〉を求め続ける
「オルタネート」信奉者の凪津(なづ)。
高校を中退し、〈亡霊の街〉から逃れるように、
音楽家の集うシェアハウスへと潜り込んだ尚志(なおし)。恋とは、友情とは、家族とは。そして、人と“繋がる”とは何か。
デジタルな世界と未分化な感情が織りなす物語の果てに、
三人を待ち受ける未来とは一体――。
“あの頃”の煌めき、そして新たな旅立ちを端正かつ
エモーショナルな筆致で紡ぐ、新時代の青春小説。

青春を感じられる作品でした!

マッチングアプリが当たり前のように利用されるようになった今、
特に抵抗なく読めました。

高校生って良いなぁ、若いなぁ、苦いなぁ、、、って思いました。
なんとなく夏に読めてよかったと思います。

特にラストの駆け抜けるような展開が読んでいて気持ちよかったです。
爽やかな読後感です。

感想

3人のストーリー

蓉(いるる)、凪津(なづ)、尚志(なおし)の3人が軸になって展開していくストーリー。

料理コンテストへ出場する蓉。
真実の愛を求めてオルタネートを信奉する凪津。
高校中退し、音楽の道を突き進む尚志。

なにかに一生懸命に、それに時間を費やして密度の濃い時間を過ごしている高校生は応援したくなるし自分もエネルギーをもらえた気がします。

蓉だけでなく、凪津も尚志も葛藤して自分なりに答えを出して前へ進んでいく、その駆け抜けるようにすぎる時間はまさに青春だなぁ、と。

 『自信なんてないです。
他にできることないから、そう見えるだけやないすか。
道に迷わない人に見えるかもしれんけど、他に道ないだけなんですよ。』

尚志が、周りに羨ましいと言われて返した言葉。
高校生って、中学生よりは強いけど大人よりは弱くて、
でもエネルギーは、もしかしたら一番あって。
強くて脆い生き物だよなぁ、って当時の自分を思い出して思ったりしました。

マッチングアプリ

高校生でこんなにもSNSの使用が主流になった現代だからこその悩みがあって、
でも、それによって思わぬ人と知り合うことができて人間関係の幅を広げられる。

高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」は、
マッチングアプリだけれど恋愛目的のみではなく交友関係でも使用していたり、
日常生活をより豊かにするためのツールでもあるんだなぁと思いました。

感覚としては、マッチングアプリというより
FacebookやTwitter、Instagramが一緒になったもののように感じました。

最後に

もう完全にこの人は小説家なんだ、と思わせられた作品でした。

読んだことあるのは、『ピンクとグレー』だけでしたが、
当時は良くないと思いつつ、どうしても
「本業はアイドルの小説家」と思いながら読んでしまう部分がありました。

10年ぶりに、加藤シゲアキの小説を読んで、
なんて爽やかで面白くて現代的なんだろうと思いました。

間違いなく、これは、筆者の代表作だと感じた作品でした。
(2冊しか読んでいないですが、、、汗)

これは、凄く好きでした。
次に出す小説が楽しみです。