小説

あなたにとって”働く”とはー『七つの会議』(池井戸潤・著)感想ー

トップセールスマンだったエリート課長・坂戸を
“パワハラ”で社内委員会に訴えたのは、歳上の万年係長・八角だった―。

いったい、坂戸と八角の間に何があったのか?
パワハラ委員会での裁定、そして役員会が下した不可解な人事。
急転する事態収束のため、役員会が指名したのは、
万年二番手に甘んじてきた男、原島であった。

どこにでもありそうな中堅メーカー・東京建電と
その取引先を舞台に繰り広げられる生きるための戦い。
だが、そこには誰も知らない秘密があった。

筋書きのない会議がいま、始まる―。
“働くこと”の意味に迫る、クライム・ノベル。

こういうサラリーマンの小説を読むのは、この作品が初めてだった。

私は、どちらかというと若い女の子が主人公になっている作品を読むことが多く、
大半が恋愛や青春小説のようなものを読んできた。

この小説を読んだきっかけは、
上司と小説の話で盛り上がり、上司が好きな本を貸してくれたからだった。

自分の仕事が業界は違えど、メーカーでものづくりに携わっている部分では
この小説と同じだったから、読了後、自分の仕事とも重ね合わせて考えてしまった。

サラリーマン(OL)としての働き方は、
それぞれでかなり違うと思うし違って良いと思うけれど
絶対に無くしてはならない気持ちがあるよな、と思う。

会社勤めをしている人の誰もが読んでほしい小説。




感想

ものを作って売ることに含まれる危険性への意識の低さ

この小説では、ものを仕入れて売るメーカーである、東京建電が舞台になっている。

この「ものえお仕入れて売る」ということに足してとても考えさせられる小説だった。

 

私たちは、”もの”を売っているということに対しての危険性に、
もっと意識をむけなければいけない。

会社員をしていると、自分たちが作っているわけではなく、
作っていただいた”もの”を取り扱っているから
その”もの”がどのように作られているかに対しての意識が低くなりがちになる。

私は、坂戸や八角が働く東京建電でいう製造部で働いていたので、
ものづくりに対しての意識は、他の部署より高いと思う。

意識が低くなり、管理がずさんになるとリコールにつながるからだ。

当たり前のように使われ、当たり前のようにお店に並んでいる商品が、
全然当たり前ではないことを、私たちはもっと感じても良いと思うし、
感じるべきなのだと思う。

 

どんどん安くても良いものが世に出回るようになってそれが当たり前になってきた。
(百均なんて、まさにそれ)

でも、売る側からしたら、
「それはいくらのコストで作っていて人件費や材料費はどうなっているの?」
と思うのです。

そして、中国製やカンボジア製、インド製の文字をみて、
なにかを考えずにはいられない。

安いと嬉しいし、安く売られているもの全てを否定しているわけではないけれど、
なにも考えずに安いから、と手に取ってしまうのはやめたいな、と思う。

そんな、より目に見えにくくなってしまったものづくりに対して、
考えさせてくれる小説だった。




はたらくということ

この小説は、8章にわかれていて、それぞれの章で中心人物が変わる。

それぞれのキャラクターの生き方が、家族や恋人との関係を通して語られている。

 

会社員としての仕事に対する考え方は、
まだ2年弱しか会社員人生を送っていない私にとって、視野の広がる話だった。

育ててくれた家族への感謝の気持ちから、自分に厳しく愚直に働くものがいたり。
社内の人間関係を知り尽くして、うまく社内での地位を確立しようとするものがいたり。

果たして、自分にとっての会社とは、働くこととは。
ここでのやるべきこと、やりたいこと、大切にしたいことは何か。

なにも考えずに働くことをできるけど、それでは何も得られない。

この小説で一番好きだったのは、
そんな何もできていないと自覚した浜本優衣が
退社する前になにかしようと動く章。

ただ徒にすぎていった日々はもう取り戻すことはできないけれど、
未来なら変えられる。

そして、変えるためにはまず自分が変わらなければならない。

自分を信じてやり抜くことに、何事も意味があるのだと思う。

変わろうと頑張る優衣を応援しないではいられない。
そして、自分も行動する勇気をもらえる。




最後に

読まず嫌いで、働くおじさんストーリーは読んでこなかったので(笑)
新鮮で、面白かった。

もう自分も働く身であるから、考えさせられることが多くて、
自分の視界を広げることができた。

ちょうど、転職の時期に読んだから、
次の仕事への姿勢を見つめ直して、良いスタートが切れそう。

こんな小説を楽しめる日がくるなんて。
大人になったなぁ、と思う。