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小説

無意識な差別は必ず存在するー『82年生まれ、キム・ジヨン 』(チョ・ナムジュ・著)感想ー

2020年日本公開、韓国映画「82年生まれ、キム・ジヨン」原作小説。

ある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したかのようなキム・ジヨン。
誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児…
彼女の人生を克明に振り返る中で、
女性の人生に立ちはだかるものが浮かびあがる。

女性が人生で出会う困難、差別を描き、
絶大な共感から社会現象を巻き起こした話題作!

韓国で100万部突破、異例の大ベストセラー小説。

ずっと気になって読みたかった本をようやく読みました。

読み終えて思ったことは、これは韓国だけの問題ではないということ。
日本も状況は似ているな、と思いました。

共感できることがかなり多かったです。

私たち女性は、女性差別に対してもっと声をあげるべきだと気づいたし、
男性はこの小説をきっかけにこのおかしな世界に気づいて欲しいと思いました。

感想

無意識な差別は必ず存在する

読んでいて気づいたのは、男性は女性蔑視していることに
気づいていない瞬間が多いことでした。

 

キムジヨンが子供を連れて公園のベンチでコーヒーを飲んでいた時、
近くにいたサラリーマンの男性たちが言った言葉

正確には聞きとれなかったが、途切れ途切れの会話が聞こえてきた。
俺も旦那の稼ぎでコーヒー飲んでぶらぶらしたいよなあ……
ママ虫もいいご身分だよな……
韓国の女なんかと結婚するもんじゃないぜ……。

ママ虫というのは、
「育児もろくにせず遊びまわる、害虫のような母親」という意味のネットスラングらしく、
私はこんな言葉があることに衝撃を受けました。

これは極端なことなのかもしれないけど、
悪気もなく世の中はこういうものだからね、という風に
女性を下に見ていることも沢山あるよなと思いました。

私がいた会社ではかなり女性が多く産休や育休、時短勤務の人も多かったですが、
その方達が育児そのものの大変さや、育児と仕事の両立の大変さを
何度も伝えてようやく男性に伝わっているように見えました。

そのくらい何度も伝えないと、
女性の目線で考えることはないのかもしれないなと思いました。

変わらない世間と現実

私の祖父も男尊女卑だったので、
私の身に起きたいくつかのことを思い出して涙が出ました。

この小説で語られる80年代の女性の生きる現実は、
かなり厳しいものがあったけれど
そこから40年も経った今でも残る女性の生きづらさについても
よく考えさせられました。

日本でも、育児休暇や産休をきちんと取り入れているところはまだまだ少数。

私のいた会社では、生理休暇という制度があったけれど
社内サイトには生理休暇として申請できるリンクはありませんでした。

制度としては存在するけれど、使うことはできなかったんです。

世の中はほんとうに、大きく変化した。
しかしその中のこまごまとした規則や約東や習慣は、大きく変わりはしない。
だから結果として、世間は変わらなかった。

この文章に激しく頷いてしまいました。

最後に

この小説のレビューをいくつか見ていて、
男性が絶賛している感想を何件も見つけました。

これは、希望だ、と思いました。

韓国の実情を知ることができて、
たくさんの気づきを手に入れることができた気がします。

私自身も、おかしいことにはもっと声をあげていきたいと思えました。

悲しくなることもまだ多いけれど、
未来はきっと今より少しでも明るいことを願います。

本当に読んでよかった作品でした。