◯◯◯ー『◯◯◯』(◯◯ ◯・著)感想ー
13歳になった「ぼく」の日常は、今日も騒がしい。
フリーランスで働くための「ビジネス」の授業。
摂食障害やドラッグについて発表する国語のテスト。
男性でも女性でもない「ノンバイナリー」の教員たち。
自分の歌声で人種の垣根を超えた“ソウル・クイーン”。
母ちゃんの国で出会った太陽みたいな笑顔。
そして大好きなじいちゃんからの手紙。
心を動かされる出来事を経験するたび、
「ぼく」は大人への階段をひとつひとつ昇っていく。
これは、読んでくれたあなたの物語。
そして、この時代を生きるわたしたちの物語――
前作がとても面白かったので、気になっていた2冊目。
2冊目を読んで、やっぱり面白くて
それはやっぱり英国と日本の生活の違いや文化の違いが大きいのもあると思う。
だけどそれだけじゃなく、
13歳の「ぼく」の視点を交えた日常から見えてくる世界が
わたしたちにわかりやすく、刺激を与えてくれるからだろうなぁ、と。
感想
対話することで理解し尊重する
この作品の魅力は、なにより著者の着眼点と、13歳の「ぼく」との対話だと思う。
「どうせまた、わたしはいい年してスノー・フレイクだって言いたいんでしょ」
わたしは配偶者に言った。スノー・フレイク。それは、ポリティカル・コレクトネスにうるさい若い世代のことを、上の世代が揶揄して使う言葉だ。「雪片のように壊れやすく、傷つきやすい」という意味である。
家庭で話していて、
ポリティカル・コレクトネスに関連した話題が家庭内で出ることがすごい。
それだけ、多様性のある英国で生活するということは日本よりも
さまざまな社会問題に触れる機会が多いのだと感じる。
ちなみにポリティカル・コレクトネスという意味はこういうこと。
ポリティカル・コレクトネス(英: political correctness、略称:PC、ポリコレ)とは、社会の特定のグループのメンバーに不快感や不利益を与えないように意図された政策または対策などを表す言葉の総称であり、人種、信条、性別などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を用いることを指す。
実は、わたしはこの言葉を知らなかったのだけど
そんなわたしでもスッと入ってくる内容で
英国の社会問題に触れながら日本について考えを巡らせるきっかけになった。
鉄の柵で囲われた狭い場所
個人的に、著者の考えてることと近いことを私は思ってきたかもしれない、
と前作から感じていたのだけど、
それは幼少期に感じてきたことが近いからなのかもしれないなぁ、と。
一番近いところにいる大人を鬱という病に持って行かれた子どもには、
未来なんて鉄の柵で囲われた狭い場所にしか思えない。
そのことは、わたしもよく知っている。
わたしの親は鬱だったわけではないけれど、
“鉄の柵で囲われた狭い場所”だと思っていた時期は確かにあった。
格差社会を肌で感じざるを得ない環境にいたからこそ、
今感じられていることだって確実にあるのだろうとプラスに思うことができた。
格差社会やその他多くの社会問題について、
こういう1家庭の周りに起きていることから自分に置き換えて考える方が
伝わるものがあると思う。
最後に
世界には、いろんな人がいていろんな価値観がある。
そして、それぞれの国はそれぞれ問題を抱えている。
自国のことに関して、世界に対して、
もっと考えなくてはいけないことがたくさんある。
そのきっかけをくれるノンフィクション作品だと思います。